はじめに:「行きたくない」は、必ずしも“やめたい”ではない
子どもが口にする「行きたくない」には、
いろいろな気持ちが混ざっています。
- ただの眠さ・その日の気分
- 学校や友達関係の疲れがドッと出ている
- 先生との相性や、クラスの雰囲気が合わない
- 本気で辞めたいサイン
全部ひとまとめにして「甘えでしょ」と片づけてしまうと、
本当に守りたいSOSまで見落としてしまいます。
そこでこの記事では、
- 「行きたくない」と言われたときの3段階の対処
- “すぐに辞める子”にしないための言葉がけの工夫
- 「厳しい先生 vs ゆるい先生」問題を、性格別に整理
この3つを軸に、親側のスタンスを整えていきます。
1.「行きたくない」と言われたときの対処法 3段階
● 第1段階:その場で結論を出さない
一番やってしまいがちなのが、
- 「ほら、時間がないから行くよ!」
- 「お金払ってるんだから行きなさい!」
と、反射的に押し戻してしまうこと。
逆に、いきなり
- 「そんなに嫌ならもうやめようか」
と引いてしまうのも、子どもの中で整理がつきません。
まずは、その場で「続ける/やめる」を決めないことが大事です。
声かけの例
- 「そっか、今日は行きたくない気持ちなんだね。」
- 「今は気持ちを聞いたよ。行くかどうかは、あとで一緒に考えよう。」
この一呼吸で、子どもも少し落ち着きます。
親も「感情」ではなく「状況」を見やすくなります。
● 第2段階:甘え・疲れ・相性をざっくり見極める
その日の様子を、少し冷静に観察してみます。
①「甘え」の可能性が高いとき
- その日だけやたら眠そう
- 直前までゲームやテレビに夢中だった
- 宿題が終わっていなくて面倒くさそう
こういうときは、習い事そのものよりも
「今ここから動き出すのが面倒」という気持ちが大きいパターン。
対処の軸:
・感情は受け止める
・でも、行くこと自体は“いつも通り”に淡々と
声かけ例
- 「行きたくないくらい、今日はだるいんだね。でも、始まってしまえばいつも通りできてるよね。」
- 「終わったら、帰りにコンビニで温かい飲み物だけ買って帰ろうか。」
“行ったあとの小さな楽しみ”をセットで提示すると、
子どもの腰が少し軽くなります。
②「疲れ」が溜まっているとき
- 学校行事が続いた
- テストや発表会の準備で、心身ともにぐったり
- ここ最近ずっと機嫌が不安定
こういうときは、習い事に限らず全体の負荷がオーバー気味です。
対処の軸:
・その日は思い切って「休む」選択肢もアリ
・長期的にはスケジュールの見直しを
声かけ例
- 「たしかにこの1週間、よく頑張ってたよね。今日は一回、お休みにしようか。」
- 「ただのサボりじゃなくて、“体と心を回復させるためのお休み”ね。」
ポイントは、「休む=逃げ」ではなく、
回復のための戦略的なお休みとして意味づけしてあげることです。
③「相性」の問題が見えてきたとき
- 先生の言い方がきつくて、毎回落ち込んで帰ってくる
- クラスの雰囲気に馴染めず、ずっと緊張している
- 行く前から「お腹痛い」「気持ち悪い」が頻発する
この場合は、場所を変える・先生を変えるという選択肢も視野に。
対処の軸:
・子どもの感情を否定しない
・「続けるか/やめるか」だけでなく、「変える」という中間案も持つ
声かけ例
- 「先生の言い方が怖いって感じているんだね。」
- 「同じ習い事でも、先生が違えば雰囲気が全然違うことも多いよ。一緒に他の教室も見てみようか。」
習い事の“中身”が悪いとは限りません。
人との相性の問題は、大人でもあります。
● 第3段階:後日、落ち着いたタイミングで一緒に整理する
当日のバタバタから離れて、
週末や夜など、少しゆっくり話せるときに振り返ります。
- 「あの日、行きたくないって言ってたよね。あれはどんな気持ちだった?」
- 「あのあと行ってみてどうだった? 行ってよかった? それとも、やっぱりつらかった?」
ここで、子ども自身に自分の気持ちを言語化する練習をしてもらうイメージです。
そのうえで、
- しばらく様子を見ながら続ける
- 回数やコースを変えて続ける
- 一定の区切りを設けて、やめる(もしくは別の教室へ)
といった「次の一手」を親子で決めていきます。
2.“すぐに辞める子”にしないための、親の言葉がけ
「行きたくない」を聞くたびに即「じゃあやめよう」は、
たしかに“投げ出しグセ”につながる心配があります。
一方で、どんな状況でも
「絶対やめちゃダメ!」と押さえつけるのも、
子どもの心をすり減らしてしまいます。
● 「やめてもいいけど、ここだけはやり切ろう」というラインを決める
おすすめは、家庭としてのルールを先に決めておくこと。
例:
- 学期末・級のキリのいいところまでは続ける
- 発表会までやり切ってから、やめるかどうか考える
- 入塾・クラス替えなど、生活が大きく変わるタイミングで見直す
声かけの例
- 「やめてもいいよ。ただ、○月の発表会までは“やり切った自分”になってみよう。」
- 「今はしんどいかもしれないけれど、ここを超えたら“続けきった”っていう自信になるよ。」
ゴールを一緒に見据えたうえで、そこまでは伴走する。
このスタイルなら、
「最後までやり遂げる力」と「自分で選ぶ力」の両方が育ちます。
● 親が“結果”よりも“プロセス”をほめる
続けていく中で、ぜひ意識したいのは
「結果」ではなく「過程」をほめる
ことです。
- 「雨なのに、今日もちゃんと行ったね。」
- 「練習、5分でも自分からピアノに向かったね。」
- 「難しいところ、あきらめずに3回やり直していたね。」
こうした声かけは、
「やめない自分」「頑張れる自分」という自己イメージにつながります。
3.厳しい先生 vs ゆるい先生 どっちがいい?
親が密かに悩みがちなテーマです。
結論から言うと、
子どもの性格・目的・時期によって、“ベストな先生像”は変わる
というのが現実です。
● タイプ① 競争心が強く、負けず嫌いな子
- 「次は○級を取りたい」「一番になりたい」が原動力
- 多少きつく言われても、「ぜったい見返してやる」と燃えるタイプ
こういう子には、ある程度厳しい先生が合うことがあります。
- 明確な目標を示してくれる
- できていない部分をはっきり指摘してくれる
- 合格ラインが高いぶん、実力もつきやすい
ただし、
「人格否定」「他の子と比べて貶める」タイプの厳しさは論外です。
● タイプ② 慎重・繊細で、初めての場所が苦手な子
- 注意されるとすぐに落ち込む
- 大きな声やピリピリした空気が苦手
- 自信がつくまで時間がかかる
このタイプには、ゆるやかで安心感のある先生が向いています。
- 小さな成長でもしっかりほめてくれる
- 子どものペースを尊重してくれる
- 間違いを責めず、「じゃあどうしようか」と一緒に考えてくれる
この場合、まずは
「安心して挑戦できる土台」を作ることが最優先です。
● タイプ③ マイペースで、興味のあることにだけギアが入る子
- 好きなことには爆発的に集中する
- 興味が薄れると、一気に腰が重くなる
こういう子は、「厳しい/ゆるい」の二択ではなく、
- 興味を引き出すのが上手な先生
- 目標設定を一緒にしてくれる先生
が相性◎です。
たとえばピアノなら、
- 子どもの好きな曲をレッスンに取り入れてくれる
- 検定やコンクール以外の目標(合唱の伴奏など)も提案してくれる
といった先生だと、長く続きやすくなります。
● 親ができる「先生選び」の視点
先生選びで、親がそっとチェックしておきたいのは次の3つです。
- 子どもの表情がどう変わるか
- レッスンの行き帰りで、顔が明るくなるか、暗くなるか
- ミスへの対応
- 「どうしてできないの?」で終わるのか
- 「ここが難しかったね。じゃあ、こうやってみようか」と次の一手を示してくれるか
- 親への説明の仕方
- 子どもの様子や課題を、きちんと共有してくれるか
- 相談したとき、話をきちんと聞いてくれるか
「この先生なら、しばらくお任せしたい」と
親の中で納得できるかどうかも、大事なポイントです。
おわりに:やる気とメンタルを守るのも、立派な“教育”
「行きたくない」と言われると、
つい「根性が足りないのでは」「甘えているのでは」と
心配になってしまいます。
でも、そこで一緒に
- 疲れなのか
- 一時的な気分なのか
- 相性のミスマッチなのか
を丁寧に見極めていくことこそ、
実はとても深い“教育”になっています。
- 軽い甘えには、そっと背中を押してあげる
- 本気の疲れには、休息をプレゼントする
- 相性の問題には、環境を変える勇気を持つ
その一つ一つの選択が、
子どもの「やる気」と「心の安全基地」を守っていきます。
習い事は、続けることそのものが目的ではありません。
そこで育った集中力やねばり強さ、自分を信じる力を、
これからの長い人生に持っていってもらうための“練習の場”です。
親としてできるのは、
その場を上手に選び直しながら、子どもと一緒に歩いていくこと。
今日も「行きたくない」の一言に振り回されつつ、
それでも向き合い続けているあなたは、十分すぎるほど頑張っている。
どうか、そのことも忘れずにいてほしいなと思います。

