1. 「辞めたい」と言われた瞬間、親の胸に走るザワザワ
子どもが何気なくこう言う瞬間、ありますよね。
「ピアノ、そろそろやめたい」
「スイミング、もう行きたくない」
「塾に本腰入れたいから、ダンスは一回お休みしたい」
親の頭の中は一気にフル回転です。
- 今まで払ってきた月謝…
- ここまで頑張ってきた時間…
- 「すぐやめる子」になってしまわないか…
- 先生にどう説明しよう…
- 「続けさせた方がいいのか」「やめさせた方がいいのか」
冷静な顔をしながら、心の中はプチ会議どころか総会状態。
でも、最初にそっと押さえておきたいのは、これです。
「習い事をやめる=甘え」でも「親の敗北」でもない。
むしろ、「限られた時間とエネルギーをどこに配分するか」を
一緒に考える、とても良いタイミングだったりします。
2. みんな本当はどんな理由で悩んでいるのか
習い事を辞めるかどうか悩むとき、表に出てくる理由と、
心の中の本音には、少しギャップがあることが多いです。
表に出てくる「よくある理由」
- 勉強との両立が難しくなってきた
- 塾(進学塾など)を始めたい・本腰を入れたい
- 親の仕事の時間帯が変わり、送迎が難しくなった
- 引っ越しの予定・可能性がある
- 金銭的な負担が大きくなってきた
- 子どもがあまり楽しそうではない/嫌がるようになった
どれも、十分すぎるほど“立派な理由”です。
親の心の中にある本音
- 「せっかくここまで続けてきたのに…」というもったいなさ
- 「簡単にやめさせたら、“すぐ投げ出す子”になるのでは」という不安
- 「自分が決断を間違えたらどうしよう」という責任感
- 「先生に申し訳ない」「周りの目が気になる」という人間関係のストレス
このあたりがごちゃっと絡まって、
「やめる」「続ける」の判断が、妙に重たくなるんですよね。
3. 習い事を「やめてもいいサイン」はどこに出る?
何でもかんでも「イヤならやめてOK」だと、もちろん困ります。
一方で、「根性」だけで全てを乗り切るのも、今の時代には少し違う。
では、どんなときが「やめてもいいサイン」なのでしょうか。
サイン① 「目的」が別のところに移り始めている
例:
- 小1から続けてきたピアノよりも、今は「中学受験の勉強」に全力を注ぎたい
- スイミングは「クロールで25m泳げるようになりたい」が叶ったので、役目は果たした感じ
- 英会話より、「文法や読解をしっかりやる塾」の方に興味が移っている
目的や優先順位が変わったとき、習い事の棚卸しをするのは自然な流れです。
サイン②「時間」と「体力」が明らかに足りていない
- 学校+宿題+塾+習い事+移動時間…
どう見積もっても、睡眠か食事かどれかを削るしかない - 子どもが明らかに疲れている、イライラが増えている
- 練習時間が「0分の日」が続き、レッスンがストレスになっている
時間と体力のキャパを超えた状態で続けると、
その習い事も、勉強も、どちらも嫌いになりがちです。
サイン③ 習い事が「自己肯定感を削る場」になっている
- いつも怒られて終わる
- 「できない」自分ばかり突きつけられる
- 行く前からお腹が痛くなるレベルで憂うつ
厳しさ=絶対に悪ではありませんが、
子どもの心が折れ続けている場所であるなら、
一度距離を取る選択も、大いに“あり”です。
4. 「親の都合」を理由にしてもいいのか問題
結論から言うと──全然アリです。
- 親の仕事の時間帯が変わる
- 転勤・引っ越しの可能性がある
- 家計のバランスを整えたい
これらはすべて、子どもにはコントロールできない“環境要因”。
大人だって、仕事や引っ越しで「習い事」や「趣味」を中断すること、ありますよね。
たとえば、先生にはこんなふうに伝えられます。
親の仕事の都合で、今後生活リズムや通える時間帯が大きく変わる予定です。
それに伴い、塾や家庭学習のスケジュールも見直すことになり、
今までのように練習時間を確保して通い続けることが難しくなってしまいました。
中途半端な形で続けるのは先生にも申し訳ないので、
きりの良いタイミングで、いったんレッスンは区切りにさせていただきたいと考えています。
これは、「親の責任で環境が変わる」ということを、正直かつ丁寧に説明しているだけです。
むしろ誠実な対応と言えます。
5. 上手な「やめ方」の3ステップ
「やめる」と決めたあと、大事なのはやめ方です。
ここを丁寧にすると、子どもの心にも、先生との関係にも、傷が残りにくくなります。
ステップ① 家庭での“言葉の整理”
まずは家の中で、「公式見解」を一つ決めておきます。
- 勉強に専念したい
- 親の仕事・引っ越しなど生活の変化
- 時間と体力のバランス
- きちんと準備して区切りをつけたい
これらを混ぜて、例えばこんな一文にまとめます。
「生活リズムと勉強の方針を見直した結果、
今は○○に集中したいので、△△の習い事はいったん区切りにする」
この軸が一つあると、
- 先生に説明するとき
- 子どもが友だちに聞かれたとき
- 親自身がモヤモヤしたとき
全部、この言葉に立ち戻れます。
ステップ② 先生への伝え方
ポイントは3つ。
- 感謝を先に伝える
- やめる理由は「環境」「方針」の変化として説明
- 子どもが得た成長・良かった点を言語化して渡す
例:
先生のおかげで、ピアノを通して集中力や根気強さが身につきました。
レッスンに通うのを毎週楽しみにしておりましたが、
親の仕事の都合と、これから塾での勉強時間を増やす必要があり、
今までのように十分な練習時間を確保することが難しくなってまいりました。
とても心苦しいのですが、〇月をもっていったん区切りとさせていただければと思います。
これまでのご指導に、心から感謝しております。
先生側も、「ちゃんと考えての決断」であることが分かれば、
むしろ応援してくれることが多いです。
ステップ③ 子どもの心の着地点をつくる
子どもにはこんなメッセージを伝えてあげたいところです。
- 「やめるからと言って、今までの努力が消えるわけじゃない」
- 「ここで培った力を、次の場所で使うんだよ」
- 「“卒業”っていう区切り方もあるんだよ」
「逃げる」「あきらめる」といった言葉より、
「バトンを持ち替える」
「ステージを変える」
「一度、区切りをつける」
こういった表現の方が、子どもも前向きに受け止めやすくなります。
6. 「やめたあと」に気をつけたいこと
習い事をやめたあとに、ひとつだけ気をつけたいのは、
空いた時間が、「なんとなくダラダラ」だけで埋まらないようにする
ということです。
もちろん、少し休むのは大事。
ただ、何週間も何カ月も「結局、何も始まらなかった」となると、
親の側にモヤモヤが戻ってきてしまいます。
理想は、
- 勉強時間をしっかり確保する
- 家での読書・創作時間を増やす
- 家族との会話や、ゆるやかな遊びにあてる
など、「時間の使い方が変わっただけ」と感じられる状態。
そしてときどき、さらっと言ってあげてください。
「あのとき習い事をやめたから、
こうやって○○にたっぷり時間を使えるようになったんだよね。」
これだけで、子どもにとって 「やめたこと」=「正しい選択だった」という実感 になります。
7. まとめ:やめる勇気は、「次の一歩」のためにある
習い事をやめる理由で悩んでいる親子は、本当にたくさんいます。
それだけ、みんなが真剣に子どもの成長と時間の使い方を考えている、ということでもあります。
- やめる=逃げ ではない
- もったいないのは、「全部を中途半端にすること」
- 習い事は“永遠の契約”ではなく、その時々のベストを探すプロセス
- 「親の仕事」「引っ越し」「勉強に専念」は、十分すぎるほど正当な理由
そして何より、
子どもの未来に向けて、親子で一緒に舵を切ることそのものが、
もう立派な「教育」になっている
ということを、どうか忘れないでいてほしいなと思います。
続ける勇気も、やめる決断も、どちらも尊い。
親子で話し合って選んだ道なら、大丈夫。
その選択を、“これからの時間の使い方”で正解にしていけばいいだけです。

