「集中力がある子」と聞くと、
生まれつき落ち着いていて、本にかじりつき、ダラダラせず勉強に向かう……
そんな“理想の姿”をイメージしがちです。
でも現実は、
- 5分ごとに席を立つ
- 消しゴムで遊び始める
- さっきまでやる気だったのに急に「今日、疲れた」
そんな姿に、親のほうが試されているような日もあります。
結論から言うと、集中力は「才能」ではなく、育てていく「技術」や「環境」の結果です。
そして、その「環境」と「ルール」をどう設計するかは、家庭ごとに大きく違います。
この記事では、前半で「集中力」の基本を整理し、
後半でわが家の具体的な2つの実例
- 「時間とごほうび」を厳格にリンクさせるルール
- 「家全体を集中モードにする」環境づくり
この2つをご紹介します。
1.「集中力」とは何か ― 親子で共有したい定義
まずは言葉の整理から。
① 集中力=「今、この一つに心と体を合わせる力」
集中力とは、
「やると決めた一つのことに、意識・時間・エネルギーを集中的に注ぐ力」
のことです。
- 宿題を30分やり切る
- 音読を3回続けて読む
- 本を10分間、立ち歩かずに読む
こうした“小さな一点集中”の積み重ねが、本当の集中力です。
② 「長時間=集中力が高い」ではない
ここで大事なのは、**集中力の価値は“長さ”ではなく“密度”**ということです。
- なんとなく2時間だらだら机にいる
よりも - 本気の15分を3セット
後者のほうが、はるかに力になります。
「うちの子は長く続かない」と嘆く前に、密度の高い15分をつくることから始めると、親子ともにラクになります。
2.子どもの集中力の「仕様」を知る
大人目線だと「1時間ぐらい集中してほしい」と思ってしまいますが、
子どもの脳の“標準仕様”は少し違います。
① 年齢+5分が目安
よく言われる一つの目安は、
集中が続く時間 ≒ 年齢+5分〜10分
- 小2 → 10〜15分
- 小3〜4 → 15〜20分
- 小5〜6 → 20〜30分
程度がひとつのイメージです。
もちろん個人差はありますが、
「30分ぶっ通しでやらせたい」親の期待が高すぎるケースも少なくありません。
② 集中は「波」でやって来る
さらに、集中は
「グッと深く潜る時間」→「ふわっと浮上する時間」
という波でやって来ます。
- 10〜15分:グッと潜る
- 2〜3分:小さな休憩
- もう一度:グッと潜る
このリズムを前提としてスケジュールを組むと、
「すぐ席を立つ=ダメ」ではなく、“波の一部”として扱えるようになります。
3.集中力を邪魔する「3つの敵」
集中力を高める前に、まずは「敵」を知っておくと対処がしやすくなります。
① 環境の敵:視界に入る“誘惑”
- 机の上のおもちゃ
- 近くにあるマンガ
- すぐ手に取れるゲーム・スマホ
脳は「すぐ楽しいもの」にどうしても引っ張られます。
これは意志が弱いからではなく、“人間として当たり前の仕様”です。
対策はシンプルで、「視界から消す」こと。
- 机には「今やるもの」以外置かない
- おもちゃ・ゲームは別の部屋 or 箱にしまう
- スマホは物理的に親が預かる
この3つだけでも、集中力は目に見えて変わります。
② デジタルの敵:通知・マルチタスク
大人も子どもも、集中を壊す最大の犯人は
「ピロン」という音と、
「ちょっとだけ見よう」の積み重ね
です。
- LINE
- メール
- SNS
- ゲームアプリの通知
勉強時間だけは、通知を完全OFFにする “聖域時間” を決めると、脳が「今は集中モードだ」と学習していきます。
③ 心の敵:不安・プレッシャー
実は、不安も集中力を大きく削ります。
- 「また怒られるかもしれない」
- 「これ全部終わらなかったらどうしよう」
- 「テスト、悪い点を取ったら……」
こうした思考が頭の中でぐるぐるしていると、
目の前の問題に意識が向かなくなります。
だからこそ、親が
- 「今日はここまでできたらOK」
- 「全部じゃなくて、この3問を丁寧にやろう」
とゴールを小さく区切ってあげることが、とても大事です。
4.集中力の「5つの土台」― 勉強以前に整えたいこと
集中力はテクニックだけでなく、生活の土台から生まれます。
① 睡眠:最強の“脳のアップデート”
- 寝不足の子は、イライラしやすく、集中も切れやすい
- 「早寝早起き」がそのまま「集中力の総量」を決める
まずは、
- 就寝時間をできるだけ一定にする
- 朝、同じ時間に起きて朝日を浴びる
この2つが“無敵の基本セット”です。
② 体調と食事:血糖値のジェットコースターを避ける
- 甘いお菓子+ジュース → その直後は元気、あとからドーンと眠気
- 脂っこいもの → 消化にエネルギーが取られ、頭がぼんやり
集中したい時間帯は、
- ご飯・パン・麺+タンパク質(肉・魚・卵・豆)
- 野菜・スープで血糖値の上下を穏やかに
こんなイメージで整えると、脳が安定して働いてくれます。
③ ルーティン:脳に「今から集中するよ」と合図を送る
毎回ゼロからエンジンをかけるのは大変です。
そこで役立つのが**「集中前ルーティン」**。
- 勉強の前に机を拭く
- お気に入りのペンを並べる
- タイマーをセットする
- 深呼吸を3回する
これを毎回同じ順番で行うことで、
脳が「この流れが来たら集中モードだ」と学習します。
④ 時間の枠:終わりが見えると、人は頑張れる
「いつまでやるか分からない」状態は、集中の敵です。
- タイマーで「まずは10分」
- 終わったら2〜3分、体を伸ばす
- もう1セット10分
この“短距離走スタイル”なら、親も子も続けやすくなります。
⑤ 場所:集中する場所を“固定”する
- 宿題はダイニング
- 集中演習は自室の机
- 読書はお気に入りの椅子
のように、**「この場所=この活動」**とリンクさせていくと、
場所にスイッチ機能が生まれてきます。
5.具体的な「集中力トレーニング」5選
ここからは、家庭で今すぐ実践できる方法を整理します。
① 10分集中トレーニング(ミニ・ポモドーロ)
- タイマーを10分にセット
- その10分は「一つのことだけ」をする
- 終わったら2〜3分、伸びをしたり水を飲んだり
- 余力があれば、もう1セット
ポイントは**「10分を、ちゃんと終わらせる成功体験を積む」**こと。
これを日々重ねるうちに、10分→15分→20分と自然に伸びていきます。
② 音読集中トレーニング
音読は、
- 目で読む
- 口を動かす
- 耳で聞く
と、複数の感覚を一度に使うので、集中トレーニングとして非常に優秀です。
- 「このページを3回続けて読む」
- 「10分間、姿勢を変えずに音読する」
など、時間かページ数でゴールを決めると取り組みやすくなります。
③ シングルタスクの練習
あえて、
「今は、この一枚のプリントだけ」
「今日は、このテキストのこのページだけ」
と決めて、**一つの作業を“最後までやりきる練習”**をしていくと、
勉強も、それ以外の活動も、少しずつ変わっていきます。
④ 「始めるハードル」を徹底的に下げる
集中力の最大の敵は「やり始める前の5分」です。
- 「机に向かうだけ」
- 「教科書を開くだけ」
- 「1問だけ解く」
こうした“超ミニ目標”を、親が口に出してOKラインとして示すと、
子どもの肩の力がふっと抜けます。
⑤ 記録する ― 集中は“数字”にすると育つ
- 今日は10分×3セット
- 昨日は10分×2セットだったから、ちょっと成長
- 合計30分集中できた日にはシール1枚
のように、集中時間を記録する習慣をつくると、
子ども自身が「自分はちゃんと頑張れている」と実感しやすくなります。
6.わが家の実例①:時間とごほうびを“厳格にリンク”させる
ここからは、わが家で実践している集中力の仕組みを、少し具体的に書いてみます。
1つめのキーワードは **「時間を決める」「目標を決める」「報酬は厳格に」**です。
① まず「時間」と「ページ」をはっきり決める
わが家では、勉強を始める前に必ず、
「この問題集を○○ページまで、〇時〇分までにやろう」
というふうに、量と締め切りをセットで決めます。
- ただ「勉強しなさい」ではなく
- 「算数のテキスト〇ページまでを、18時20分までに」
と、終わりの形を具体的にイメージできるようにすることを徹底しています。
ここで大事にしているのは、
「頑張ればちゃんと届くライン」に設定すること。
- 集中していれば達成できる
- でも、ぼーっとしていたら間に合わない
この絶妙なラインを探るのが、親の腕の見せどころです。
② 成功と報酬は“セット”、ただし「絶対に緩めない」
わが家では、その目標を達成できたときだけ、
「夕食のデザート」という小さなごほうびを用意することがあります。
- 「〇ページまで終わったら、今日のデザートは〇〇にしよう」
と、事前に約束しますが、ここで一つだけ鉄のルールがあります。
それは「達成できなければ、絶対にごほうびは与えない」ということ。
ここを甘くしてしまうと、
- 「まあ、失敗しても別にいいや」
という思考になり、
集中力ではなく「適当にやってもなんとかなる感覚」だけが育ってしまいます。
もちろん、親としては
- 「今日は疲れていたし、まあいいか……」
と情に流されそうになる日もありますが、
そこをグッとこらえて、成功と報酬を厳格にリンクさせることを意識しています。
③ 無理をさせない ― 設定は常に“成功可能ライン”に
とはいえ、ただ厳しいだけでは続きません。
大事なのは、
「集中していれば達成できるくらいの時間設定」
にすることです。
- 体調や疲れ具合
- その日の機嫌
- 学校や習い事の負荷
こうした要素も見ながら、
その日の“ベスト”ではなく“ベター”を狙うラインを探します。
「今日はこれくらいなら、ちゃんと集中したら届きそうだな」
というポイントを探してあげることが、
親側の“集中力を見るトレーニング”にもなっていきます。
④ 失敗した日はどうするか
ルール通り、ごほうびは与えません。
ただし、「人格」ではなく「行動」だけを淡々と振り返ります。
- 「今日は途中でボーっとしちゃったね」
- 「でも、最初の10分はすごく集中してたよ」
こんなふうに、できた部分はきちんと認めつつ、結果はぶらさない。
これを積み重ねると、
- 「ごほうびのためにやる」から
- 「ごほうびを目標にしながら、自分の集中力を出し切る」へ
少しずつ、意識の重心が移動していきます。
7.わが家の実例②:「家全体が勉強モード」になる環境づくり
2つめの実例は、「環境」のつくり方です。
わが家では、集中力は子ども一人の問題ではなく、「家全体の空気」で決まると考えています。
① 勉強タイムは「家族全員・静かな時間」
わが家には、暗黙のルールがあります。
「子どもが勉強している間は、家族も静かに過ごす」
具体的には、
- 勉強タイムには、夫婦間のおしゃべりはしない
- テレビを見る習慣がないので、基本的にテレビはつけない
- 大きな生活音が出る家事は、時間をずらす
こうして、勉強している子どもだけが“がんばらされている”空気をつくらないようにしています。
② 親自身も、勉強か仕事をする
これは、かなり意識しているポイントです。
子どもが問題集に向かっているとき、親が横で
- ダラダラとスマホを触る
- ソファでゴロゴロしながら動画を見る
という姿を見せてしまうと、
どれだけ「集中しなさい」と言葉で伝えても、子どもの心には届きません。
わが家では、
- 親も本を読む
- 仕事を進める
- 資料を整理する
など、それぞれの「大人の勉強タイム」にしています。
子どもだけ勉強して、親が遊んでいる
ーーこの構図では、決して本物の集中力は育たない。
そう考えているからです。
子どもにとって一番説得力があるのは、
親の「言葉」ではなく、親の「背中」です。
③ 「ながらスマホ」は家庭内でNGに
もう一歩踏み込んで、
わが家では “ダラダラスマホ”をNG としています。
- 勉強タイムに、親がスマホでSNSを延々とスクロールする
- 子どもの横で通知がピコピコ鳴り続ける
こうした状態は、子どもの集中力だけでなく、
「大人も本気でやっていないんだな」というメッセージにもなってしまいます。
もちろん、調べ物でスマホを使うこともありますが、
- 必要なときだけ
- 用が済んだら画面を閉じる
というメリハリを、できる限り意識しています。
④ 「家の空気」が、子どもの集中の“器”になる
こうして、
- テレビがついていない
- 大人も黙々と手を動かしている
- 無駄な雑音が少ない
そんな時間帯が家の中に増えてくると、
子どもにとって「集中すること」が、特別なイベントではなく、
**“日常の一部”**になっていきます。
集中力は、子どもの意志だけで戦わせるには、あまりに大きなテーマです。
だからこそ、**「家そのものを、集中しやすい器にしてしまう」**という発想を、大事にしています。
8.親にしかできない「集中力サポート」
集中力そのものは子どもが使う力ですが、
それを支える環境づくりは、どうしても大人の出番になります。
① 「結果」ではなく「集中していた時間」を言語化する
- 「100点だったね」よりも
- 「さっきの30分、黙々とプリントやっていたね」
という声かけを増やしていくと、
子どもの中で
「テストの点=価値」ではなく
「集中して取り組む時間=価値」
という軸が育ちます。
わが家でも、
- 「時計チラチラ見ながらも最後まであきらめなかったね」
- 「お父さん・お母さんも一緒に静かに頑張れたね」
と、“集中していたプロセス”をできるだけ言葉にするようにしています。
② 途中で集中が切れても「やり直せる」空気を
- 集中が切れた → 怒られる
というパターンが続くと、
子どもは「どうせできないし」と、最初から腰が引けてしまいます。
- 「一回休憩しようか」
- 「じゃあ、あと5分だけやってみよう」
と、“再チャレンジしていい空気”を大人がつくることが、
長い目で見て、一番大きな集中力の土台になります。
9.集中力は「生きる力」の土台になる
ここまで、少し細かく集中力の話を書いてきましたが、
結局のところ、集中力とは
「自分の時間とエネルギーを、どこに投資するかを選べる力」
です。
- 勉強に集中できる力
- 本に集中できる力
- 人の話に集中して耳を傾ける力
- 自分の好きなことに没頭する力
これらはすべて、将来、
- 仕事で成果を出す
- 人間関係を大切にする
- 自分の人生を自分で選んでいく
ための、**とても大きな“生きる道具”**になります。
わが家の
- 「時間とごほうびのルール」
- 「家全体を勉強モードにする環境づくり」
も、テストの点だけが目的なのではなく、
「やると決めたことを、時間内にやり切る力」
「自分の居場所を、自分で集中しやすい空間に変える力」
を、毎日の生活の中で静かに鍛えているつもりで運用しています。
終わりに ― 今日の15分と、静かなリビング
集中力は、一夜にして劇的に変わるものではありません。
けれど、今日の15分の集中は、確実に未来に積み上がっていきます。
- たった15分の音読
- たった10分の計算
- たった1ページの日記
そこに、
- 「〇ページ・〇時〇分まで」という明確なゴールと
- 家族全員が静かに手を動かしているリビングという環境
が重なると、その15分は、ただの“勉強時間”ではなく、
**「家族で一緒に集中力を育てている時間」**になります。
大切なのは、
- 完璧を求めすぎないこと
- 「できた集中」に光を当ててあげること
- じわじわと時間を伸ばしていくこと
- 成功と報酬の約束を静かに守ること
- そして、親自身も「集中する大人」であろうとすること
この5つだけです。
今日決めた“〇ページ・〇時〇分まで”。
今日つくった“静かな勉強タイム”。
その小さな積み重ねが、きっと、
「自分でスイッチを入れて、集中できる子」
という、何より頼もしい力につながっていきます。

